間宮さんのニセ花嫁【完】



「あ、ここにいたのか」

「千景、稽古中ですよ」

「少し見学してもいい?」


見学って、見せられるものは何もないが。間宮さんは私の隣までくると腰を下ろし、中途半端に生けられた花器を見て首を傾げる。


「これは?」

「生け花です!」

「テーマとかあるの?」

「あ、秋……とか?」


いや、秋の植物を使っているんだからそれは当たり前か! すると彼は徐に近くにあった蕾のついたコスモスの枝をハサミで切る。


「折角だし、こういうまだ咲いてないのも使ったら秋らしさが出るんじゃないか?」


間宮さんは用意されていた花や草を次々と使って私の花器を鮮やかに生けていく。
彼が花を生けるだけでそれまで寂しそうにしていたコスモスの花たちが一気に豪華さを増した。


「こら、あまり甘やかしてはいけませんよ」

「飛鳥は初心者だから最初から基礎を教えずに生けるのは難しいと思うよ」


間宮さんの指摘にはぁと呆れた溜息を漏らした梅子さんは「お茶を組んできます」と席を外した。
彼にアドバイスを受けながら完成させた生け花は、最初私がイメージしてきたものよりもぐっと良くなった気がする。


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