間宮さんのニセ花嫁【完】
「こんなに綺麗に生けられたの初めてです! これ、私の部屋に飾ってもいいですか?」
「あぁ、構わないよ」
「千景さん、華道もお上手なんですね」
「昔からばあちゃんに稽古付けられたからな」
今の飛鳥みたいに、とふっと笑みを浮かべた間宮さんの目は何処か遠いところを見つめていた。
しかし何故彼は急に稽古の見学になんて来たんだろうか。そう疑問に思っていると不意に彼の視線が私に向けられる。
「飛鳥、あのさ……」
「はい?」
「……」
尋ねられる内容を待っていたのだが、彼は何かを言いかけた口を閉じると「いや」と首を横に振った。
「何でもない。気にしないでくれ」
「……?」
そう言って何事もなかったように部屋を出ていった彼に残された私はその違和感に頭を傾げたのだった。