間宮さんのニセ花嫁【完】



「私にそういうイメージがあるのは仕方がないです。だけどここ最近、結婚って私がしたいって気持ちだけじゃ上手くいかないってことを悟ったので……今はいい男を見抜ける力を身に付けたいなと」

「佐々本さん、遂に悟りの境地に入っちゃったんですね」

「可哀想な飛鳥」

「そこ二人黙って」


私に聞こえる声でコソコソと話す弥生と柳下くんを咎めると、その勢いのまま「乾杯!」と酎ハイを持つ手を高く空へ突き上げた。
そうして開催された誕生会だが、予想通り主役であるはずの私を無視して盛り上がり始めた。営業部はお酒が好きな人が多いから仕方がない。

それと同時にあんなに大量にあったご飯が次々と無くなっていくことに恐怖を覚える。


「佐々本さんの好きな男のタイプってどんなですか?」

「柳下くん、酔ってる?」

「酷いなー、興味で聞いちゃ駄目なんですか?」


珍しく酔っているのか、舌の回っていない彼の言葉に口を濁した。


「わ、私は好きになった人がタイプだから!」

「逃げた。つまり元彼みたいな横暴な男がタイプってことですね」


図星を突くような彼の言葉に言い返せなくなるのは、一度彼に聡と揉めていたところを助けてもらったから。
聡も怒らなければいいところは沢山あった。今ではどこを好いていたのかは覚えていたいけど。でも当時の私が付き合ったんだから、やはり彼にも好きなところがあったはず。


「最近いいなーって思う人います?」

「……どうしたの?」

「いや? 興味」


彼はテーブルに肘を立てて大きな目でこちらを見つめてくる。その吸い込まれそうな瞳から目を逸らしてハイボールを煽った。


< 169 / 309 >

この作品をシェア

pagetop