間宮さんのニセ花嫁【完】
その言葉の真意が知りたいと溜まらず「どうして」と話を続けた。
「詳しくはまだ話せないがどうしても早急に婚約者が必要となった。佐々本がよければ協力してほしい」
「……どうして私なんですか」
「……」
間宮さんの周りには沢山の女性がいるはず。彼と結婚したいという人だって少なくないだろう。
それなのにどうして彼に好意を寄せていない私を選んだというのか。
「婚約者のふりをするならよく知れた相手の方がいいと考えた。それに佐々本も何か困っていることがあるんじゃないかと思ってな」
「っ……」
確かに、元婚約者がストーカー化したことや親に婚約者を紹介すると約束してしまったことなど。私には自分でも解決しきれない問題が山積みだ。
まさかこの間家まで送られている間に私はそんなことまでも口にしてしまっていたのか。
「勿論、事実婚で処理をするから籍を入れる必要もない。もし俺が佐々本の力になれるようなことがあるならどんなことでも手を貸したいと思ってる」
「……」
「ずっととは言わない。考えてくれないか」
これは夢なんだろうか。いつも憧れていた間宮係長が私に偽装結婚を申し出てきた。
そうか、だからこんなに高そうなレストランで食事をしたのか。少しでも私の気分を上げてこの話の承諾を得ようとしたから。
それにしても彼が偽装結婚を持ちかけてくる理由が分からない。こんな状況で、どんな答えを出せばいいというのか。
と、
「……なんて、冗談だよ」
「……え?」