間宮さんのニセ花嫁【完】
「佐々本さんって歳下どう思います?」
「と、歳下だなーって思う」
「あ、子供扱いしてます?」
「してないしてない」
なるほど、彼は酔うと面倒臭くなるのか。私にべったりと張り付いてくる柳下くんに困り、弥生に助けを求めようとするが当の彼女は既に潰れてしまい、テーブルに俯せるように眠っていた。
仕方がない、と立ち上がると彼が「どこいくんですか?」と虚ろな目で見上げてくる。
「飲み物買ってくる。ここお酒しかないでしょ」
「えー、俺も行きますぅ」
「酔っ払い連れていけないし」
大人しく待ってて!と言いつけると私は財布を持って騒がしい屋上は後にした。
時刻は八時半を周りかけている。酔う前の柳下くんの話だと九時には屋上を施錠するから早く水を買って帰らないと。
会社のすぐ近くにあるコンビニで二人分のペットボトルを購入していると突然後ろから手が伸びてきてもう一本の水を手に取った。
「それも合わせて買うから貸して?」
「間宮さん!」
追いかけてきてくれたのか、「他に買うものはないか?」と私から受け取ったペットボトルをカゴの中に入れた。
二人の分のお水も一緒に購入してくれた彼と一緒に再びビルの屋上へと向かう。
「主役が抜け出してきていいのか?」
「いや、もうみんな忘れてますから」
まぁ周りが楽しそうにしているのは私も嬉しいから気にしていないのだけど。
寒空の下、口から吐いた白い息が消えていくのを見て「もう秋じゃなくて冬なんだな」と実感する。