間宮さんのニセ花嫁【完】



顔を上げると彼が手にしていたグラスを傾けて残りのワインを飲み干した。


「悪い、驚かせたな。今のは全部冗談だから忘れてくれ」

「冗談……」

「嘘ってこと。ちょっとしたドッキリだな」


和かに微笑んだ彼の笑顔に一気に肩から力が抜けていく。何だ、嘘か。吃驚しすぎて言葉を返そうにも何も浮かんでこない。


「この間俺に意地悪なことを言ったお返し」

「そんなこと私言いましたっけ?」

「はは、覚えてない?」


もしかして、


『間宮さんと結婚できる人は、絶対に幸せそうですよね』


あの発言か!


「あ、あ〜。やっぱり根に持ってたんですね……」

「少しだけな。でも本当にもう気にしてないから」

「……」

「佐々本の元気がないから、美味しいものを食べたら元気出るかなって。今日は慰め会だよ」


ワインの追加を頼んだ彼にしてやられたと頭を抱える。そりゃそうか、突然偽装結婚なんて言い出されて頭が混乱していたけどドラマの世界じゃないんだし。揶揄われただけだ。
普段、こういう冗談とか言うタイプの人じゃないから簡単に騙されてしまった。



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