間宮さんのニセ花嫁【完】
「だけどお前はこの家の跡取りは自分じゃ務まらないと思っていたはずだ。だから俺が跡取りになる自然な流れを作った、違うか?」
「……俺がそこまで深く考えてると思ってる?」
「分かるよ、昔から一緒だったからな」
「……」
この二人、実は似た性格をしているんじゃないだろうか。お互いがお互いの為に選んだことで嫌い合っていると思っていた。
やっと兄弟らしいところが見えた気がする。
「俺が跡取りになることを選んだのは百瀬がテレビで活躍しているのを見たからだ。お前のせいじゃない、お前のおかげだよ」
「っ……」
彼の言葉に百瀬くんは鼻を鳴らすようにして顔を上げる。その目はうっすら赤く染まっており、二人の中にある確執が解けていくのが分かった。
「別に、兄貴のためにアイドルやってるわけじゃない」
「……そうか」
「あと、まぁありがとう」
それを聞いて間宮さんが漸くいつものような優しい笑みを浮かべた。きっと百瀬くんはこれを言いたくて帰ってきたんじゃないだろうか。
二人が笑い合っているのを眺めているだけで自然と笑みが溢れる。
「さぁ! 夕御飯食べましょう! ポジディブですよ!」
「あーちゃん何それ」
「飛鳥の口癖」
というかお前いつから飛鳥のことそう呼んでるんだ?と尋ねる間宮さんをスルーして来た道を戻る百瀬くん。
そんな当たり前のような日常に心を弾ませると、私も家族の元へ向かっていった。