間宮さんのニセ花嫁【完】
翌朝、百瀬くんは朝早くから家を出発すると聞いていたので家族総出で玄関まで見送りにきていた。
「たまには元気な顔を見せなさい」
「これ、お弁当作ったの。良かったら仕事の間に食べて?」
「ばあちゃんも母さんもありがとう」
二人に微笑みかけると今度は私と間宮さんのことに視線を当てる。間宮さんが「頑張れよ」と告げたがまだ彼には素直になれないのか、「頑張るのは当たり前」と見栄を張ったような返事が聞こえてふっと吹き出してしまった。
「じゃああーちゃんも、直ぐ顔出すけど」
「うん、テレビ見てるね」
「ありがとー、紅白のリハ頑張ってくるわー」
「(今、サラッと凄いこと言ったな)」
これに驚いているのは私だけなのか、他の三人はいつもの様子で百瀬くんのことを見送っていた。やはり間宮家、まだまだ奥が深いと見た。
百瀬くんという嵐が過ぎ去り、年越しに向けて更に慌ただしくなる間宮家。
今日は一日朝から家中の大掃除だ。使用人だけではなく、私たちも身の回りの物の整頓をしていく。
「桜さん、この荷物ってどこにしまったらいいですか?」
「あぁ、それねぇ。二階の物置のところなのよ、分かる?」
はいと返事をすると私は重みのあるダンボールを両手で抱えて階段をゆっくりと上がる。