間宮さんのニセ花嫁【完】
間宮さんは驚きを隠せないといった表情で私を見た。
「驚いたな。意外と佐々本は勘が鋭い」
「言っときますけど、私彼氏の浮気に自分で気付きましたからね」
「はは、そうか。いや悪い、今のは笑うところじゃなかった」
「いえ、もう笑っていただいても」
もう笑い話にしていただいた方が精神衛生上よろしいかと。
だけど間宮さんの乾いた笑いを聞いたとき、彼が私に見せていた上部の仮面が剥がれていった気がした。いつから彼は仮面を付け続けていたんだろう。
「……確かに、早急に婚約者を見つけないと駄目なのは本当だよ。一週間以内に親に紹介することになってる」
「今付き合ってる人はいないんですか?」
「いないな。でもこの期限を延長することは出来ないから困っていたんだ」
「それで私に声を……」
あれ、もしかして……
『もぉおぉおぉお! もうどこの誰でもいいから私と結婚して!』
間宮さん、この間の飲み会での私の発言を間に受けた!?
「あ、あれはですね……本当頭がおかしくなっていたというか」
「うん、分かってる。でも佐々本も困っていることがあったら助け合えると思ったんだ」
「……」
困ってること……間宮さんのとは深刻さは違うとはいえ、自分の状況が不味いのは確かである。
もし間宮さんに恋人のふりをしてもらったら元彼のストーカー被害から免れることが出来るのでは? ついでに婚約者として親と会ってもらうことも……
「でも、やっぱり駄目だよな。どう考えてもセクハラになるし、今回のことは無かったことに……」
「待ってください!」
私はテーブルを強く叩くとその勢いで席から立ち上がった。私が今の状況を打破するには彼の力を借りるしかない。