間宮さんのニセ花嫁【完】
二階は桜さんの部屋や間宮さんのお父さんの書斎があるらしく、私はあまり足の踏み入れたことのない領域だった。慌ただしい一階とは違い、まだ掃除が行われていない二階はシンと静まっていた。
確かこっちだったような、と記憶を辿り足を進めると廊下の突き当たりに少しだけ扉が開いた部屋を見つけた。そろっと中を覗いてみればどうやらここが物置で間違いなさそうだ。
少し埃っぽい部屋の中に入ると私は段ボールが置けるところを探す。すると棚の上に丁度いい広さの空間があったのでぐっと腕を力を入れてダンボールを持ち上げる。
爪先立ちをし、プルプルと震えながら何とか棚の上にダンボールを置けた。すると気が抜けたのか腕を下ろす瞬間に棚の上の段にあった本のようなものに指を引っ掛けてしまう。
「うわっ……」
引っかかった本が私の頭の上に落ちてくる。慌てて目を閉じて腕で顔をカバーする。
「飛鳥!」
その声が聞こえたと同時に私は誰かの腕の中に抱き止められていた。本が床に落ちる音が部屋に響き、安全が確認されるとゆっくりと顔を上げる。
「ち、千景さん」
「大丈夫か?」
怪我していないことに間宮さんは安心したように息を吐く。