間宮さんのニセ花嫁【完】
しかし今のような咄嗟のタイミングでも間宮さんは私のことを下の名前で呼んでくれるんだな。
彼の中で私の名前が定着しているようでなんだかこそばゆいように感じる。
「しかし怪我がなくて良かった。こういう重いのは俺を頼ってくれていいから」
「いえ、こちらこそ散らかしてしまって」
彼が段ボールを棚の上に上げてくれている間、指に引っ掛けて落としてしまった本などを拾い上げる。
するとその一つのアルバムのようなもののタイトルに目が止まった。
「卒業アルバム?」
「懐かしいな、ここにあったのか」
「わっ」
後ろからアルバムを覗き込んだ間宮さんの顔が近く驚きの声を上げてしまった。
「高校の時のですか?」
「だろうな、埃を被っていないということは母さんがたまに読んでる可能性があるな」
「ふふ、桜さん千景さんのこと大好きですから」
見てもいいですか?と許可を取ると彼は「そんなに面白いものではないよ?」と謙虚な態度を見せる。
紗枝さんたちから聞いていて昔の間宮さんがどんな人だったのか気になってきたからいい機会かもしれない。私はまず生徒紹介のページを開き、彼の個別写真を探す。
「ま、ま……あ! ありました!」
私が高校生の間宮さんの写真を指差すと「懐かしいな」と彼が苦笑いをする。