間宮さんのニセ花嫁【完】
「千景さん?」
「っ……そろそろ戻ろうか。戻ってこないと母さんも心配するだろうし」
貸して?と言われるままにアルバムを手渡すと彼はそれを元の位置へ戻した。
今まで普通に読ませてくれていたのに、あの写真について言及しようとした瞬間にまるでそれを拒絶するかのように目の前で閉じられた。
触れないで、そう言っているみたいに。
「(あ、まただ……)」
また線が引かれる。
広い間宮家の大掃除が終わる頃には日も暮れ、遅めの夕食を家族で囲いながら取っているとテレビの画面に百瀬くんの姿が映った。
生中継ということもあって昨日まで一緒に過ごしていた彼がこうしてテレビに歌っているのを見ると不思議な気持ちに見舞われる。
「そういえば大晦日だけど今年も本家の集まりは何時くらいになるんだ?」
百瀬くんの出演が終わった頃を見計らって間宮さんが私以外の二人に尋ねる。
そうか、やはり名家となると年末年始は本家で過ごすのが当たり前なのだろう。
すると梅子さんが「そのことですが」と箸を置いて、
「今年は私と桜だけが出席するので貴方たち二人は家で留守番をお願いします」
「え、行かなくていいんですか?」
「寧ろ行きたいのですか? 千景の嫁というだけで見世物にされますが」
「い、いえ〜……」