間宮さんのニセ花嫁【完】
「結婚したフリをする期間はどれくらいですか?」
「……半年ぐらい、と思ってる。それだけの期間があればそのあとは離婚したことにして有耶無耶に出来るはずだ」
「……本当に籍は入れなくていいんですよね」
大事な部分をもう一度確認する。籍を入れないのであれば私も間宮さんも結婚したことも全て無かったことに出来る。
半年、この期間の協力関係で私が間宮さんの役に立てるかもしれない。
「佐々本、まさか本気でこの話を受けるつもりか」
「いつも間宮さんには沢山助けていただいてますし、それに私も間宮さんが婚約者になってくれたら色々な問題が解決するんです」
私は自身の胸を押さえ、強く訴える。
「これって、利害の一致ってやつですよね!」
もう既に気持ちは固まっていた。だから後は間宮さんの覚悟だけだ。
「間宮さん、結婚しましょう。偽装結婚!」
私がそう強く言い放つと彼は一度は驚いた顔をし、シンとした静かな空気が部屋に広がる。
しかし間宮さんはその後直ぐ吹き出すように笑った。
「まさか、OKを貰えると思ってなかった」
「私も、まさか間宮さんから偽装結婚を申し込まれるとは思ってなかったです」
「そうだよな、お互いに」
彼は私同様腰を上げると目の前に手を差し出した。
顔を上げると間宮さんが優しく目を細め、微笑んでいた。
「佐々本、よろしく頼んだ」
「っ、はい!」
私が力一杯に彼の手を掴むと「強いな」とおかしいように声を漏らす間宮さん。
こうして私たちの半年間による摩訶不思議なニセ夫婦生活が始まろうとしていた。