間宮さんのニセ花嫁【完】
「この間の正月結局帰れなかったからさぁ」
「あの日凄い嵐だったし仕方がないよ」
「そうなんだけど。あれから兄貴とはどう?」
「へっ、な、ナニモナイヨ」
急に間宮さんの話を振られたからか声が裏返ってしまった。あからさまに挙動不審になる私に彼が疑いの目を向けるのは分かる。
「嘘、絶対何かあったでしょ」
「うぅ……」
「あーちゃん、本当に考えてること顔に書いてるから気を付けてね」
話を聞いてあげる代わりに荷物を持ってあげようと私からレジ袋を奪った百瀬くん。これ、私が話すまで返してくれないやつだ。
私は渋々とあの大晦日の日のことを彼に話すことにした。
「え、告白したんだ!?」
私の話に驚いたように声を上げた彼だが、当人の私はあの日の苦痛を思い出して今でも倒れてしまいそうに顔がさめざめとしている。
「それでどうしたん?」
「なかったことにしてもらった。言うつもりなかったし、気まずいまま契約が終わるのも嫌だったから」
「何それ、俺後であの人殴っておこうか?」
「やめて」
しかしこれは間宮さんと話し合って決めたことだ。百瀬くんも「あーちゃんがそれでいいなら」と仕方がなく納得してくれたようだ。
「えー、じゃあ兄貴とあーちゃん離婚したらもう俺とも会ってくれなくなるの? 寂しいんだけど」
「離婚した二人が頻繁にそれぞれの家族に会うっていうのも変だしなぁ」
「無理無理、俺あーちゃんのこと気に入ってるし。これからも末永くよろしくしてもらうつもりだから」
「う、うん?」
彼の言っていることの半分は意味が分からないが、出来れば間宮家の人たちと縁を切るようなことはしたくない。
だけど本当に円満な離婚なんて出来るんだろうか、不安になってきた。