間宮さんのニセ花嫁【完】



彼女は照れ臭いような素振りを見せながら自身が今日ここにきた理由を語ってくれた。


「私前まで教師をやっていたんだけど最近辞めてね、今まで出来なかったことをやりたいなと思って最初に浮かんだのが茶道だったの」

「どうしてですか?」

「恥ずかしいのだけど、昔の恋人が茶道をしている人でね。だけど私は教師を辞められなくて彼についていくことは出来なかったの」


その恋人が間宮さんということは直ぐに分かった。そして二人が分かれた理由も。
二人が分かれたのがいつのことなのかは定かではないのだけど、円満な別れではないというのは彼女の口ぶりからも伝わってきた。

間宮さんだけではなく楓さんも後悔が残っているってことなんだ。


「凄く今更かもしれないのだけど、少しでも昔の悔いが少しでも晴れたらいいなと思って」

「……あの」

「ん?」

「その、昔の恋人さんのこと……」


今でも好きなんですか?

それを聞いて、私はどうするつもりなんだろう。もし楓さんが今でも間宮さんのことを好きだったら。

そうしたら、私は……


「間宮さん、調子はどうですか?」

「っ……」


指導の様子を見に来てくれた講師の先生が手が止まっていた私たちに声を掛けてくれた。
えっとと返答に困っていると反対側から驚いた声と同時に彼女の息を呑む音が聞こえた。


「間宮……?」

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