間宮さんのニセ花嫁【完】
結婚へのステップ 5
間宮さんのニセ花嫁
5万人もの人が入るドームの中央で百瀬くんが見事なパフォーマンスを決める。彼が一つ笑みを浮かべるだけで周りが歓声に包まれた。
弥生はドームを後にするとコンサートの余韻に浸っているのか、ライブ終わりに入ったレストランで「はぁ~」と光悦の溜息を漏らした。
「良かった、凄い良かった」
「ふふ、そうだね」
「チケット取れなくてどうなることかと思ったけど、まさか飛鳥の親戚がコンサートの関係者だったなんて」
「は、ハハハ」
本当は百瀬くんにコンサートのチケットを貰ったんだけど。でもそれは流石に言えないか。実は桜さんや梅子さんも一緒に関係者席で見ていたらしいが、空気を読んで私には話しかけないでいてくれたみたいだ。
弥生のコンサートの感想を聞きながら話に合わせて笑っていると、彼女が急に話すのを止めてしまう。
「どうしたの?」
「最近飛鳥、元気ないよね。正月辺りから」
「そ、そうかな?」
「そうだよー。今週なんてずっと死んだような顔で仕事してたじゃん」
「死んだ……」
そこまで酷かったのか。友人に心配をかけてしまったことに反省をしていると、彼女は「確かにさ」と、
「間宮さんが辞めるってなってからずっと会社暗いニュースばかりだけど、でもそうなると間宮さんも辞めづらいだろうし。だからさ、間宮さんが安心して会社をされるように盛大にお見送りしてあげたいんだよね」
「……うん、そうだね」
弥生の言葉に納得させられると今は私にできることをしようと心に決める。
「(きっと彼は自分のことを話そうとしてくれない……)」
だったら、私が自分で動くしかない。