間宮さんのニセ花嫁【完】



そして今、


「(そうだ、私あの後寝て……)」


昨晩のことを思い出した私は自身が着付けてもらった寝間着の着物に身を包んでいることに気が付く。
つまりここは間宮さんの実家。というか後で話があるって間宮さんに言われていたのにぐっすりと眠りこけていた。


「今何時?」


スマホを確認しようとするが私の鞄が見当たらない。そういえば私が着ていた服も脱衣場で脱がされた後、どうなったんだろう。
布団から出て探そうと動き始めたその時、


「佐々本」


和室の襖の奥から聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「ま、間宮さん?」

「起きてたか、入って大丈夫?」

「あ、は、はい!」


慌てて着物の乱れを直してから返事をすると間宮さんが襖を数回に分けて横に開いた。
すると私の前に姿を見せたのは銀鼠色の着物に身を包んだ間宮さんだった。

普段会社ではスーツや白シャツ姿しか見たことがなかったため、彼が着物を着ているということ自体が新鮮だった。
それにしても彼の長身のスタイルといい整った顔といい、暗い髪の色にまで和服が似合っていて目が離せなくなる。


「おはよう、よく眠れたか?」

「……」

「佐々本?」

「っ、お、おはようございます!」


いかん、思わず見惚れてしまっていた。上司のイケメンさに改めて心を揺すぶられる。
こんな姿、会社の間宮さんファンの女性社員が見たらみんな卒倒ものだよ。


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