間宮さんのニセ花嫁【完】



生涯かけて、その言葉にいてとたってもいられなくなり、今度は自分から彼の胸へと飛び込んだ。
間宮さんは一瞬驚いたものの、力の限り抱き付く私を優しく受け止めてくれた。


「私が、間宮さんを幸せにします!」


間宮さんが「守る」と違ってくれたように、私も……


「私しか、間宮さんのことを幸せにできません!」

「っ……うん、飛鳥にしか無理だ」

「私、しか……」


この人の過去も未来も、隠された本音も償いたい後悔も、その全て。
それら全部まとめて、私が彼のことを幸せにしたい。

誰でもない、私が。


「私も……大好きです」


互いの想いを確かめ合うように強く抱き締めると、彼は私のことを抱き留めている片方の手を自身のコートのポケットに突っ込んだ。
そして取り出した小さな箱を私の前に差し出す。その中身を見た瞬間、「あ、」と言葉が溢れ出た。


「指輪……」

「……」


彼は私が残していった指輪を指に取り、そしてもう片方の手で私の左手を掴んだ。
あ、今度は左なんだ。その事実にまた滲み出るように目に涙が溜まっていくのが分かる。

間宮さんが左手の薬指に手にしていた指輪を嵌める。指輪の形は変わっていないのに、付ける手を変えるだけでその存在の意味は大きく異なる。

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