間宮さんのニセ花嫁【完】
一抹の不安を抱えながら梅子さんの部屋を出た私たちの手にはあの日の婚姻届があった。
お互いに顔を見合わせると間宮さんが「うーん」と悩ましげな声を漏らす。
「どうしようか、これ。飛鳥はどうしたい?」
「え、どうしたいって……」
つまりこのまま事実婚のまま進めるか、今からこの婚姻届を出して正式に籍を入れるか。
それか法的な手続きが必要がないのであれば一度恋人同士という関係に戻ってみるか。確かに私たちは夫婦だが、想いが通じ合ったのはほんの昨日の出来事だ。
私は手に持っていた婚姻届を見つめ、そして顔を上げる。
「間宮さんは、どうしたいですか?」
間宮さんは私とどうなりたいんだろう。そんな疑問が浮かんで素直に伝えてみれば、彼はまた「そうだな」と暫くの間考えるような様子を見せる。
そして、
「俺は……どっちでもいいかな」
「え?」
「飛鳥と一緒にいられたらそれでいい」
「っ……」
そ、れは……
「(凄まじい殺し文句なのでは!?)」
間宮さんの口からそんな言葉が聞ける日が来るだなんて。両想い万歳だ!