間宮さんのニセ花嫁【完】
「弥生も誰かにあげるの? 柳下くんとか?」
「いや、なんで柳下固定。あげるけど同僚としてってこと」
「弥生からもらえるの楽しみにしてそうじゃない?」
「それを言うなら飛鳥からでしょ」
私?と答えると彼女は神妙な顔付きに変わった。
「今だから言えるけどアイツ、飛鳥が間宮さんと付き合ってるって知った時本気で悔しがってたからね。あれはアンタに本気だったよ」
「いやいや、柳下くんにはそういう気ないでしょ」
「飲み屋で散々愚痴に付き合わされた私がここにいるんだけど」
あの柳下くんが?と普段の彼を思い浮かべる。柳下くんといえば甘いマスクで女性に人気で、なにかと歳上をからかってくるイメージがあるけれど。
それに今はどちらかというと弥生に執着しているような。
「で、どうするの? 間宮さんにあげるんだよね?」
「……」
私は彼女から手渡されたパンフレットを凝視する。本場パリで修行を積んだショコラティエの限定チョコや高級ブランドのチョコ。どれも美味しそうで目移りするけど、何をあげたら間宮さん喜んでくれるんだろうか。
「……あのさ」
「何かあった?」
「ううん、そうじゃなくて……今年は手作りにしてみよう、かな」
なんて、と続ければ弥生は「なるほど!」と納得したように手を合わせた。