間宮さんのニセ花嫁【完】
「残念ながら、やはり貴方は跡取りには向かないようです。この話はなかったことにし、次の跡取りは……」
「っ……」
このままじゃ私のせいで間宮さんに迷惑がかかってしまう。そう思った瞬間に私の身体は気持ちよりも早く動いていた。
「待ってください!」
「っ、何ですか貴女は」
張り上げた声が部屋に響き渡る。ずっと静かに話を聞いていたからか、梅子さんが目を丸くして私を見ていた。
声が震える、汗が止まらない。だけどこのままじゃ駄目だという気持ちが私を突き動かした。
「確かに私は大学も普通で茶道の経験もなく、梅子さんから見たら教養のない女かもしれません」
「……」
「ですか、千景さんを思う気持ちは本当です。間宮に嫁ぎたい気持ちは本物なんです!」
根性論でどうにかなるものではないとは分かっているが、ここで足掻かなければ後悔すると私の中で何かが告げていた。間宮さんの家を継ぎたいという気持ちをここで途絶えさせてはいけないと思った。
何よりも、間宮さんが私を選んだくれたからにはその役に立ちたかった。
「私、間宮家に相応しい人間になります。だから、彼をこの家の跡継ぎにしてください。お願いします!」
その場限りでもいい。ここで誠意を見せなかったら何もかもが終わりなんだ。
私は畳に手をついて頭を下げると間宮さんも梅子さんも呆気に取られたように言葉を失った。