間宮さんのニセ花嫁【完】
何も反応がない、と不安になって頭を上げようか悩んでいると、隣から吹き出すような笑い声が聞こえてきた。
「ふは、はははっ……」
「千景、さん?」
見ると間宮さんが大口を開けて笑い、私の背中をポンポンと軽く叩いた。梅子さんはわなわなと唇を震わせながらそんな間宮さんに訴えかける。
「な、何なんですかこの子は」
「俺も吃驚してる。凄くいい子なんだ」
「……」
間宮さんは身体を起こした私にだけ聞こえる声で「ありがとね」と呟く。その表情は酷く優しく、穏やかなものだった。
「ばあちゃん、何を言われても俺の意思は変わらないよ。この家を継ぎたいと思ってる。前までは俺にそんな器はないって思っていたけど、でもこの子と出会って変わったんだ」
「……千景さん」
間宮さん、凄くそれっぽいこと言ってるけど昨日「結婚しよう」となった相手のことをよくそんな風に紹介できるな(人のことは言えない)。
すると梅子さんは深く溜息を吐きながら頭を抱えた。
「まさか、こんな小娘を連れてくるとは思ってなかったですよ」
「こ、小娘……」
言い返す言葉もないと黙り込んでいると彼女はふうと息を吐いて顔を上げる。