間宮さんのニセ花嫁【完】



「間宮さんはどうして家を継ぎたいんですか?」


ずっと胸に溜まっていた疑問をぶつけると彼が不思議そうに私を見たので慌てて顔の前で手を振った。


「ご、ごめんなさい。朝と似たような質問をしてしまって。でも家族の方を騙してまで家を継ぎたい理由がやっぱりあるのかなって思って」


私も何の理由もなしに人を騙したりなんかしたくない。だけど心の中で普段から間宮さんのことを尊敬しているからこそ、彼が成し遂げようとしていることが気になっていた。
会社では私たちの一番前に立って引っ張っていってくれる。誰かがミスをしても必ずフォローに入ってくれる。理由もなく人を悲しませる人じゃないことは普段の様子を見ていれば良く分かる。

強い眼差しで見つめていると間宮さんは観念したように、そして残念そうに微笑んだ。


「俺が家を継ぐことによって幸せになる人がいるんだよ」

「幸せ、ですか?」

「そう。元々家を継ぐ気がなかった俺にばあちゃんは猶予を与えてくれた。その期間は自分のやりたいことをやれたし、後悔はないよ。だから俺は今まで俺を自由にさせてくれた人たちへの恩返しとして継ぎたいんだ」


"幸せになれる人"、を明確に話してはくれなかったが間宮さんは人の為に家を継ぐとはっきりと口にしてくれた。
全部が納得できる答えではなかったものの、"人の為"というのが酷く彼らしいと思った。

間宮さんはその人たちのためなら残りの人生を捧げてもいいと思ってるんだ。


「(期間は、6ヶ月……)」


それに比べたらこの期間なんて……


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