間宮さんのニセ花嫁【完】



「佐々本、本当に悪かった。今からならまだ間に合うから全部話そう。俺が巻き込んだって説明する」

「っ、待ってください!」


私、誰かの為に頑張ったことなんてあったっけ。胸元でぎゅっと手のひらを握りしめると遂に覚悟を決める。


「……半年、でいいんですよね」

「うん?」

「私、やります」


そう言うと間宮さんが目を大きく見開く。


「間宮さんのニセ婚約者、やります! それで梅子さんに認められるように頑張って、間宮さんをこの家の跡継ぎにします!」

「……本気か?」

「はい、間宮さんが他の方の幸せの為にそうするのであれば、私はそんな間宮さんの幸せの為に頑張ります!」


なので、と私は畳に手を付くと頭を深く下げた。


「不束者ですが、よろしくお願いします」


結婚ってなんだろう。昔から夢に描いていたくせに、まだ実感が湧いてこない。
ただ父と結婚した母の姿を見て、家族っていいなと思ったんだ。家族になることって簡単なことじゃないんだと知ったんだ。

ちゃんと知りたい、結婚する上で何が大切なのか。何が見えてくるのか。
そして私が夢に見ていた理想の結婚を見つけたい。

この半年間で。


「……佐々本は、さっきといいたまに吃驚することを言うよな」

「さっき?」

「ばあちゃんの部屋で結婚を反対されたとき」


間宮さんの言葉に頭を上げ、乱れた髪の毛を直していると「あ、」と声を漏らす。


『ですが、千景さんを思う気持ちは本当です。間宮に嫁ぎたい気持ちは本物なんです!』


そういえば間宮さんの目の前で大胆な発言をしていたのを思い出した。


「あ、あれはもうどうにかしなきゃと思って! 反対されたままだと困るでしょう!?」

「うん、だけど俺は期待してたのかもしれない。そんな佐々本の言動を」

「へ?」


期待?


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