間宮さんのニセ花嫁【完】



店内の着付け部屋で紗枝さんに華やかな着物を見せてもらう。和モダンなデザインの柄で赤いストライプの着物は柄だけではなく生地まで上品に作られているのがよく分かる。


「飛鳥さんは千景といつから付き合い始めたの?」

「え、えっと……1ヶ月ぐらい前から」

「えぇ!? それでもう結婚なの!?」


一応桜さんたちと話がズレないようにと思ったが、やはり交際1ヶ月で結婚は一般の人からしたら理解はしてもらえないだろうな。


「そう、まぁでもあそこの家なら分かるかな。千景、なかなか家を継ごうとしていなかったから」

「そうなんですか?」

「えぇ、いずれはって気持ちはあっただろうけど。桜さんともよく会うけど早く孫の顔を見たがっていたし」

「ま、孫……」


桜さん、その夢はまだ叶えてあげられそうにないです。すみません。
着々と着付けを進める紗枝さんに私はずっと疑問に思っていたことを尋ねる。


「紗枝さん、も……結婚を反対されてるんですか?」

「え?」

「さっき私たちの結婚が反対されてるって聞いた時に『飛鳥ちゃんも』って仰っていたので」


推測なんですけど、と申し訳なさげに伝えると彼女は帯を締めるために私の背後に回った。


「親がね、正志がうちと家柄が合ってないって言うのよ」

「へ?」

「正志の家は代々続く漆塗りの職人一家でね、でもうちの家は呉服屋だから釣り合わないって。本当はどこかの名家の跡取りとでも結婚して欲しいのね」

「そんな……」


つまり紗枝さんは私と間宮さんにおける後者というわけだ。この世界の人たちって家柄のことでみんな悩みを抱えているんだなぁ。


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