間宮さんのニセ花嫁【完】



紗枝さんは私の帯を綺麗に締め終わると鏡の前へと移動した。


「私と正志はもう少し時間が掛かるかもだけど飛鳥ちゃんたちは頑張ってね。きっと素敵な夫婦になれると思う」

「……」


鏡に映った着物はとても素敵だったのに、それを身に纏っている私は浮かない顔をしていた。
私は間宮さんの為に梅子さんに気に入られようと頑張っているけど、同時に紗枝さんの為にも頑張りたいと思い始めた。

私と間宮さんの結婚が認められたら、少しでも紗枝さんに勇気を分け与えられるかもしれない。

間宮さんのところへ戻ると丁度話が終わったのか、彼は男性物の着物を眺めていた。紗枝さんの呼びかけでこちらを見た彼と目が合う。


「よく似合ってるよ。紗枝の見立てに間違いはないな」

「ふふ、そうでしょ。良かったらこれ着て帰って?」

「そうする、これも一緒に買うよ」


え、今買うって言った? そんなに着物一着って軽く買えるお値段じゃないよね!?


「ち、千景さん!? いいんですか!?」

「うん、うちにそういう柄の着物少ないから。それに母さんも今の飛鳥の姿見たら喜ぶよ」

「そうですかね……」


やっぱり間宮さんってお金持ちのお坊ちゃんなんだなぁ。それなのに会社ではしっかりと馴染んでるから不思議な感じだ。
この二日間で間宮さんに対する認識が変わった。始めの頃は仕事も出来て頼りになる上司だったけど、プライベートの彼は意外と強引に話を進めたり、突拍子のない発言をしたりと驚かされてばっかりだ。

どっちが本当の、ではなくきっとどちらも本当の間宮さんなんだ。
私はその両方の面を見れているから、他の人よりも得しているのかもしれない。


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