間宮さんのニセ花嫁【完】
紗枝さんにお礼を言って受け取った着物ごと車へ戻る。シートベルトをつけると間宮さんの家へ向かって走り出した車内で私は「そういえば」と、
「紗枝さんも結婚のこと、家に反対されてるんですね」
「……聞いたんだ?」
「き、気になってしまって」
赤信号で止まると彼はゆっくりと私が知らない二人のことを語り始めた。
「この世界では家の力関係って結構重要なんだ。紗枝の親は結婚のこと聞く耳も持たないって感じらしくて」
「そうなると私ってまだ恵まれてるんですね」
「そうだな、でもきっとあの二人なら大丈夫だよ。今回のことで向こうの親も諦めがつくだろう」
「諦め?」
しかし信号が変わってしまい、間宮さんは運転に集中してしまったのかそれから先は語らなかった。
諦めってなんのだろう。それに今回のことって……そういえば紗枝さんも気になることを言っていた。
『本当はどこかの名家の跡取りとでも結婚欲しいのね』
何だかそんな話、最近何処かでも聞いた気がする。
「あ、」
私は昨日の桜さんとの会話を思い出した。
『母が話していた婚約者の方も昔からこの家とよくお付き合いしてくださってるお家の娘さんだったのだけれど』