間宮さんのニセ花嫁【完】



私がどうして頑張れるのか、か。


「きっと、間宮さんだからです」

「ん?」

「私を必要としてくれたのが間宮さんだったから。だから嬉しかったんです」


いつも凄いなって思ってる人に必要としてもらうことが、他の誰かに必要としてもらうよりももっと。信頼してるって思ってもらえているようで、それだけで強いパワーになる。


「やっぱり間宮さんは凄いです。いつも人に気を遣って、感謝するのはこっちの方」

「……そうかな、他の奴らに見せていないだけで本当の俺は他人に迷惑をかけてばかりの人間だよ」

「そんなことありません! 今回のことだってきっと紗枝さん嬉しかったはずです。だって結婚するって言ったとき、少し安心したように見えました」

「……」

「間宮さんのお陰で、気持ちが明るくなる人がいます。だからネガティブにならないでください」


きっと間宮さんは私に迷惑をかけていることを懸念しているようだけど、意外と私は今の状況がそこまで嫌ではない。こうして人のために働けることが嬉しかったりするのだ。

私は両手を握ると体の前でガッツポーズを作る。


「ポジティブシンキングです! 私も常に前向きに物事を考えるようにしてます!」

「そうなのか?」

「まぁ、ポジティブじゃないとやってられないってことが多いからなんですけど」


今のところ元彼のことも家族のことも何も解決していないから、ただ現実から目を逸らしているだけになる。
しかしずっと淡々と話していた間宮さんが突然「ふっ」と吹き出すように笑った。


「なるほど、佐々本の明るさの秘訣はそれか。勉強になるな」

「あ、ちょっと馬鹿にしましたね」

「ううん、してないよ。この数日間で佐々本の印象は変わったけどな」

「え!? どういう風に!?」


印象が変わったのは私だけじゃなかったのか、と乗り出すように尋ねると彼はひとしきり笑った後、私のことを横目で見つめて言った。


「佐々本は凄くお人好しだってことが分かった」

「……」


それ、やっぱり馬鹿にしていませんか。

家に着くと桜さんが私の姿を見るなり嬉しそうにして何度も写真を撮られたので、それはそれで大変だった。


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