間宮さんのニセ花嫁【完】
「やっぱりこの時間まで残っているのは可笑しいし、何よりもそのコンビニの袋、一回外に出て戻ってきたってことだろ」
「っ……」
考えることを集中するばかりに袋を鞄の中に直すのを忘れていた。確かに湿布ぐらいならご飯を食べた後コンビニに寄ればいい。
「(あぁ、この人は……)」
やっぱり周りのことをよく見てる。
「心配になって帰ってきたんだ。本当に何もないなら帰るよ」
よく見て、少しでも気掛かりなことがあれば声を掛けて「大丈夫か」と尋ねてくれる。それが当たり前に出来る人。だから私はずっとこの人に憧れていたんだっけ。
彼のそんな優しさに自然と口を開いていた。
30分後、私は再び自分のマンションの前にまでやってきていた。
「8階の、奥から2番目の部屋です」
前に出られない私の代わりに間宮さんが地上から部屋の玄関を確認してくれる。その姿に申し訳なく思いながらも酷く安心していた。
「ごめんなさい、間宮さんもお仕事終わりで疲れてるのに」
「いや、いいよ。安心して家に帰れない方が問題だからな」
実は復縁を迫られている元彼が家にまで来ていて怖い、と素直に話したところ、間宮さんは「じゃあ俺も一緒に見にいくよ」とわざわざ私の家にまで来てくれた。