間宮さんのニセ花嫁【完】
そ、そうだ。お礼をしないと。
「あ、あのよかったら上がっていきませんか!?」
「え?」
「お茶しか出せないんですけど……」
って、これじゃ私が誘っているみたいではないか!? 間宮さんは好意でここまで来てくれたのに。
額に手を当てながら「やっぱり何もないです」と口にすると呆気に取られていた間宮さんが一瞬だけマンションの外に目をやる。
「間宮さん……?」
「……いや、」
彼はこちらに向き直ると眉を下げるようにして笑う。
「じゃあお言葉に甘えて」
「す、すみません。そんなに片付いてなくて。適当に座っちゃってください」
間宮さんを部屋に招き入れた私は散らばっていた雑誌などを手にとって本棚に詰めていく。うぅ、こんなことならもっと部屋片付けて家を出れば良かったかもしれない。
しかし彼は用意された座布団の上に座ろうとせず、ずっとリビングの入り口で部屋の外へ視線を向けている。
「悪い、佐々本。ついでにあれも片付けてもらっていいか?」
「へ?」
震える指先で指された方向を目で追うと、そこには私の下着が窓際に吊られていた。ひょえ〜!と凄まじい速さでそれを引っこ抜くと自分の背中に隠し、彼の方を振り返る。