間宮さんのニセ花嫁【完】
「す、すみません……目を汚させてしまって」
「いや……」
安心したようにこちらを向いた彼と目が合うと、私は「間宮さんでも恥ずかしがることとかあるんだ」と彼の意外な一面に関心した。
間宮さんに出すコーヒーを淹れながら、珍しく落ち着きのない彼のことをキッチンから観察する。
「(間宮さんが私の部屋にいるって変な感じだな。会社の間宮さんファンに知られたら大変なことに……)」
どうぞ、とコーヒーをカップで手渡すとテーブルを挟んだ彼の目の前に腰を下ろす。
「すみません、簡単な珈琲しか作れず……」
「いや、嬉しいよ。ありがとう」
「……」
な、なんかドキドキするな。いや、これは会社の上司が部屋にいるからのドキドキであって、そのほかのなにものでもなく。
一人そう自分の中で自問自答を繰り返していると、「あのさ」と間宮さんが話を切り出した。
「話したくなければいいんだが、さっき言ってた元彼はよく家に来るのか?」
心配からか、私のことを気にかけてくれる彼に隠し事は出来ないと素直に今の現状について説明する。
「実はストーカーに近い行為を受けていまして、しつこく連絡を送ってきたり家の周りであと付けられることもあったんですけどこういうことは初めてでした」
「……向こうの浮気だったんだよな?」
静かに頷くと手に持っていたカップをテーブルの上に置いた。