間宮さんのニセ花嫁【完】
間宮さんの言葉が胸に響いて、奥に隠れていた本音をじんわりと引きずり出してきた。
「(どうしよう、なんか泣きそう……)」
私、泣きたかったんだ。
「あ、ありがとうございます。な、なんか元気出ました」
「良かった」
「や、やっぱり人生の先輩は違うなぁ〜」
込み上げてくる涙を引っ込めるために必死に明るく取り繕う。いかんいかん、こんなところで号泣してしまったら間宮さんにまた迷惑をかけてしまう。
だけど、やっぱりこの人から貰う言葉はどれも嬉しいなぁ。
「そうか、しかしストーカーか。本当に警察に言わなくて大丈夫なのか?」
「まだ直接何かをされたとかではないので動いてもらえないかと。今はほとぼりが冷めるのを待っている状態でして」
「そうか、また何かあったら力になりたいと思ってる。佐々本が俺に協力してくれてる代わりに俺も出来る限りのことは協力したい」
あまりにも真剣な顔とトーンに私は思わず照れて下を向いてしまう。彼が心配してくれることが嬉しいなんて、あまりにも不謹慎だろうか。
間宮さんは自分の鞄の中から青いクリアファイルを取り出すとその間に挟まっていた紙切れをテーブルの上に置いた。紙には複数行に分けて文章が書かれており、まるで仕事場で出る契約書のようにも思えた。