間宮さんのニセ花嫁【完】
「こ、れは?」
「俺たちの偽装結婚の契約書だ」
「け、契約!?」
「結構決まり事が多いからな。ちゃんとしておかないと後で何かあったら困るだろ」
「!?!?」
まさか今の言葉を間宮さんの口から放たれたなんて信じたくない。この人本気なのかと不審な目で見つめていると突然プッと彼が笑った。
「悪い、半分は冗談だ。だからそんな怖い顔はしないでくれ」
は、半分は本気なのか。私は紙切れの内容を頭に叩き込む。
「半年って言っても曖昧だから、しっかりと日にちを決めて。あとは一昨日に話し合った内容をまとめただけだ」
「本当だ、分かりやすい」
「気になることがあったら何でも言ってくれ」
そう言われ全体に目を通すが、これと言って無理を強いられるようなものはなかった。私が途中でやめたいと言った時、私の意見を尊重してこの関係を終わらせてくれることも記載されている。
「佐々本をことを疑っているわけじゃない。ただ後で佐々本が後悔しないか、気掛かりなんだ」
「っ……」
「その期間はお互い対等な関係でいたい。だから佐々本も俺に迷惑を掛けるつもりでいてくれたらと思っている」
心のどこかで彼に遠慮しているのを見透かされていたのかもしれない。私が彼に個人的な理由で頼みごとをするなんて恐れ多く思っていた。
しかし彼の「対等でいたい」という言葉に漸く自分に決心が付いた。