間宮さんのニセ花嫁【完】
そう言えば先週、一週間後の誕生日までに婚約者を紹介しないと駄目だと話していたのを思い出した。
すっかり梅子さんの稽古のことで頭がいっぱいで忘れてしまっていた。
「そ、それにしても凄い量の料理ですね」
「ふふ、全部千景の大好物なの。ケーキも勿論作るんだけど、飛鳥さん手伝ってくれる?」
「勿論です!」
いけない、いくら忘れていたとはいえ仮にも恋人の誕生日を忘れていた、なんて知られたらこの関係が嘘であることが容易にバレてしまう。
あたかも彼氏の誕生日を祝いたいです!というテンションで私はお誕生日会の準備を手伝った。
それにしても、
「(誕生日ってだけでこんなにも家中慌ただしくなるのか)」
殆どの料理が出来上がったので部屋の装飾に駆り出された私は居間を飾り付けしていた。
桜さんが持ってきたのは折り紙の輪っかで作られたアーチであり、それを壁に貼り付けてあるのだが実際に今日で30になる間宮さんはこれを喜んでくれるんだろうか。
そんなことをしているとお手伝いさんの一人が部屋に入ってきて、「飛鳥様」と声を掛けられる。
「良かったらこちらの飾り付けもお願いしてもいいですか?」
彼女が運んできた段ボールの中には沢山のトロフィーや盾、表彰状が詰め込まれていた。
「これは……」
「千景様が学生の時に取られた賞の数々です」
「へぇ! こんなに沢山!」
「誕生日になるとこれを部屋に飾るのが奥様のお気に入りなのです」
どちらかといえば桜さんの方が間宮さんの誕生日を喜んでいるような。慎重にトロフィーを手にとって、印字された部分を眺める。
賞の種類は様々で、剣道や水泳などの運動系から始まり、生け花や琴、英語スピーチコンクールなどの文化系まで揃い踏みだ。間宮さんって学生の時から何でも出来る子供だったんだなぁ。