間宮さんのニセ花嫁【完】



「あ、このポテトサラダ美味い」

「それは飛鳥さんが作ってくれたのよね?」

「え!?」


突然桜さんに振られた私は返答にタジタジになる。私も出来る限り何か作ろうと思ったのだが、あまりに豪華すぎる料理の数々に慄いてポテトサラダぐらいしかちゃんと作れなかった。
間宮さんは「そうなのか」とそれを口に運びながら私を見た。


「手伝ってくれたんだってな。ありがとな」

「い、いえ! 全然お力になれず!」


家族の前にも関わらず甘い空気を纏わせる彼にかぁっと顔が赤くなるのが分かった。
だ、だめだ。これは恋人のふりをしているだけ。恋人のふりをしているだけ。だから勘違いしちゃ駄目だ!

でも自分の作った料理を褒められるって当たり前だけど嬉しいんだな。

間宮さんのお誕生日会は着々と進み、あれだけあった料理が全て平らげられると今度は桜さんが一から作った大きな生クリームとイチゴのケーキが現れた。
それに年齢分のロウソクを立てたのだが、流石にこの歳で吹き消すのは恥ずかしいといい、何故か代わりに私が消すことになった。

そんな甘く美味しいケーキも締めでいただいていると今までずっと黙っていた梅子さんが口を開く。


「今度のお茶会のことですが」

「あぁ、ばあちゃんが主催の?」

「ええ、それに飛鳥さんを連れて行きます」


彼女の口から飛び出した言葉にフォークに刺していた苺が皿の上にポトリと落ちた。お、お茶会?



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