間宮さんのニセ花嫁【完】
「飛鳥を? でもまだ……」
「まだ彼女は人前に出せるほど上達はしていませんし、この状態で紹介すると間宮の信用に関わります。しかし、このお茶会での彼女の振る舞いで今回の結婚を認めるかどうかの最終決定を出させてもらいますよ」
私は「え!?」と大きな口を開けて驚き、恐る恐る尋ねる。
「そ、そのお茶会っていつあるんですか?」
「再来週です」
「ということは……」
この二週間のうちに人前で披露できるぐらいには茶道をマスターしなければならないということ。
流石にそれは酷だと間宮さんが間に入ろうとしたが、その前に梅子さんは先手を取った。
「もしこのお茶会で間宮家の人間にそぐわない振る舞いをされたのであれば結婚は許しませんし、勿論千景が家を継ぐこともなかったことにさせてもらう予定です」
「そ、んな……」
まさかこんなに早く結果が出されてしまうとは。途端に不安が立ち込めてくる私に梅子さんはいつもと変わらない厳しい目を向ける。
「私は最初に言いましたよ。間宮家の人間になりたければ生半可な覚悟では駄目だと」
「っ……」
「人前に出すに足らないようでしたらお茶会のお話も無くなりますが」
それではお先に失礼します、と腰を上げた梅子さんがいなくなり取り残された私たちの間には沈んだ空気が流れていた。