間宮さんのニセ花嫁【完】
「(二週間後か……)」
入浴を終え部屋に戻ったが、梅子さんに言われたことが頭に残っていてじっとしていられなくなり、廊下に出ると中庭が眺める縁側に腰を下ろして夜風を受けていた。
だけどもしこのお茶会で成果を出すことができたら、間宮さんとの結婚を認めてもらえて晴れて彼はこの家の跡取りになる。ピンチはチャンスでもあった、必ず掴み取りたい。
だけど本当に私が出来るんだろうか。
「部屋戻らないのか?」
ひたひたと足音とともに聞こえた声に顔を上げると、通路を歩いていた間宮さんが私のことを見下ろしていた。
「どうしたんですか?」
「少し心配になってな。隣いいか?」
「は、はい!」
どうぞ!と隣のスペースを空けると「ありがとう」と彼がその部分に腰を下ろした。
すると彼は自分の背中に隠していたものを私の前に見せる。それは見た目からも分かるほどにキンキンに冷えた缶ビールだった。
「ちょっと付き合ってよ。さっき飲んでなかっただろ」
「あ、ありがとうございます……」
彼から缶ビールを受け取ると冷えたアルミの感触が生温かい私の肌を冷やしていく。そういえば会社の飲み会でお酒に失敗してから、アルコールを摂取するのを我慢していたんだった。
お互いにプルを空けると缶の蓋を合わせる。