間宮さんのニセ花嫁【完】
「じゃあ改めて、間宮さんお誕生日おめでとうございます!」
「はは、ありがとな」
やはりこの歳になってまで祝われるのは恥ずかしいのか、彼は苦笑い。
私は一口ビールを煽ると久々に喉を潤したアルコールに快感を覚える。
「めっちゃ美味しいです! ありがとうございます!」
「いや、元気が出たみたいで良かった。悪いな、ばあちゃんがいきなり無茶振りをして」
「まぁそうですね……でもポジディブに考えてこの二週間で出来ることは全部やろうと思います」
「……本当に心強いな」
嬉しそうに笑った彼に私もつられて頰が緩まる。間宮さん、さっき少しだけ不安な顔をしていた。私が辛い思いをしているんじゃないかと心配だったんだろうか。
水滴が付いた缶を眺めているとあることを思い出してハッとする。
「すみません! お誕生日なのに何もプレゼントなくて!」
「はは、いいよ。その気持ちだけで十分だ」
「で、でも〜、い、一応? 恋人ですし」
「そうか?」
本当に私からプレゼントは期待していなかったのか、反応が悪い彼に一体何をプレゼントしていいか悩む。しかしふと考えれば最適なプレゼントが一番目の前にあったことを気が付いた。
私はビールを手に持ったまま立ち上がると「そうですよ!」と中庭に向かって口にする。
「私、絶対に梅子さんに認めてもらいます。そして間宮さんのこと、必ず跡継ぎにしてみせます」
「……」
「それが誕生日プレゼントでもいいですか?」
そう尋ねると彼は「勿論だよ」と私の言葉を真摯に受け止めてくれた。
きっと二週間後、その日は私たちにとって決戦の日になる。
少しでも間宮さんの役に立てるように、私は全力を尽くすことを心に誓った。