間宮さんのニセ花嫁【完】
間宮さんのことを家に上げるなり、佐々本家は家族全員揃っての大会議が広げられていた、台所の端っこで。
「飛鳥、本当に彼はお前の恋人なのか」
リビングのソファーに座り、母が出したコーヒーを優雅に飲んでいる間宮さんのことを見つめながら父が眼鏡の淵を持ち上げる。
「本当なのかしら、凄く素敵な方よ。30歳で営業部の係長ですって!」
「むむっ、確かに家に帰ってくると上司がいい人だとは言っていたが、まさか付き合っているとは……」
「実家は名家らしくて、茶道がお上手なんですって!」
「飛鳥、彼は本当にお前の恋人なのか」
疑われるのも分かるけど、今二人の会話を聞いてて自分たちの娘がとても傷付いていることも分かって欲しい。
するとなかなかこっちに来ない私たちを見兼ねてか、間宮さんは菓子折りを持って台所へ近付いてきた。
「お話中すみません。これよかったら、実家の近くの有名な和菓子屋の羊羹なんですが」
「まぁまぁまぁ! ご丁寧に!」
「羊羹か……久々に食うな」
取り敢えず間宮さんの印象は良いことは分かった。二人とも結婚するときに周りから色々と言われてた過去があるから、きっと人に優しくされると弱くなっちゃうんだろうな。