間宮さんのニセ花嫁【完】
間宮さんから貰った羊羹を切って並べ、ようやく四人揃って落ち着いて話ができそうになったとき。間宮さんの前に座っていた父から突然爆弾発言が飛んできた。
「間宮さん、前向きなところしか取り柄のない娘ですが、何卒よろしくお願いします」
そう言って頭を下げた両親に私は「は!?」と慌てて彼達の言葉を訂正する。
「ちょっと!何言ってるの! ただ挨拶しにきただけって言ったでしょ!」
「こんな機会、今度いつあるか分からないだろう。それに間宮さんならきっとお前のことを幸せにしてくれる」
「そうよ〜。あ、間宮くん、こちらのお菓子も召し上がって?」
「ありがとうございます」
二人もおかしいけれどこの状況に馴染んでしまっている間宮さんも色々とおかしい。
私一人でこの状況を整理しなければと思考を巡らせていると、そんな私を手助けしようと間宮さんが口を開いた。
「結婚はまだ考えていません。今は二人とも仕事が好きですから。恋人としても上司としても、飛鳥さんの仕事ぶりは評価しています」
「っ……」
「だけどいつか、そうなる日が来たら改めて伺わせてください」
まるで商談を進めるかのような話口の彼に二人は納得してくれたようで落ち着きを取り戻した。こういう時の間宮さんの状況整理能力はいつ見ても見事だと思う。
しかし母はまだ不安に思っていることがあるようで、思い詰めたような表情で間宮さんに問う。