新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~
数日ぶりの寝室に入り、ベッドに横になる。
けれど省吾さんはベッドに入らなかった。
「あの、一緒に」
「ええ。私はシャワーを浴びてきます」
「嫌です」
拒否をした私に、省吾さんは表情を崩した。
久しぶりに見た、少年のような顔。
「急に駄々っ子みたいになりましたね。気を許してくれていると、思っていいのでしょうか」
「だって、出て行ったら帰ってこない気がするんです」
「戻って来ますよ」
「嫌です」
言い出したら引くに引けなくなり、頑なに拒否をする。
寂しかった思いが、余計に私を意固地にさせた。
省吾さんは、小さな子をあやすように私の頭をかき回す。
「甘えられるのは正直、嬉しい。待っていて。寝ててもいい。必ず隣で眠るから」
かき回していた髪をかきあげ、おでこにキスを落とす。
その一連の動作が、映画のワンシーンのようで目がチカチカした。
「罪深いですね、イケメンは」
「なんです? 見惚れてくれましたか」
「ええ。いつも盗み見て、盗み見惚れています」
ハハと軽く笑って、彼は目尻を下げた。
「私も結愛さんの言葉は、話半分にしておかなければね」
ウィンクをして彼は寝室を出て行った。
彼には到底敵わない。
熱くなる頬を押さえ、ベッドに突っ伏した。
自然にウィンクをして、それがこれほど似合う人がいるのだと、驚きを通り越して、尊敬をしそうになった。
彼との、どこかよそよそしかった雰囲気が抜け、安心したのか知らぬ間に眠っていた。