新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~
「おかえりなさい。早かったですね」
柔らかな微笑みに出迎えられ、スッと肩の力が抜けた。
彼女に真っ直ぐ歩み寄り、体に腕を回す。
「あ、あの、省吾さん?」
戸惑いがちに名前を呼ぶ彼女を、ギュッ抱きしめた。
しばらく抱きしめたあと、腕を緩め、そっと彼女に口づける。
「ただいま」
「おかえり、なさいませ」
はにかむ彼女を見て、不意に自分が言った提案を思い出す。
『私と結婚するのは、異性に慣れるための練習と思ってはどうでしょうか』
彼女がこの提案を覚えているかは分からないけれど。
「練習、もう必要ないかもしれませんね」
キスのトラウマはすっかり解消されている。
「え」
「いえ。なんでもありません。いい匂いがしていますね。お腹、空きました」
「え、ええ。すぐに用意します」
きっと結愛さんなら、誰とだって仲睦まじい夫婦になれるだろう。
根拠のない想像が頭を巡り、漠然とした孤独感に襲われる。
目の前に彼女はいるのに、一人砂漠に放り出された心持ちになった。