新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~

「省吾さん、ですよ」

「なにが、です」

 先に目を逸らしたのは彼女だった。
 顔を俯かせ、布団を握りしめている。
 その手は震えているようだった。

「好き、なんです」

「なにが」

 意味が飲み込めず、彼女の次の言葉を待つ。

「私が好きなのは、省吾さんです。だから、離れたくない」

 顔を俯かせていても、真っ直ぐに彼女の声は私に届いた。

 ずっと聞きたかった言葉。

 けれど……。

「やめてくれないか。勘違いしているだけだ。今まで男性が苦手だったせいで、私ほど近くに異性がいた経験がないから」

 私は体を丸め、くしゃりと髪に手を入れた。

 まだ、なにも知らない彼女を、私が縛っていいわけがない。

 私のせいで誰とも付き合ってこなかった彼女も、今はトラウマも消え、誰とでも付き合えるようになっただろう。

 彼女を幸せにするのは、私じゃない。

 そんな確信にも似た思いが、彼女がキスをしても話せるようになってから、自分の中で燻るようになった。


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