新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~

「違います。苦手だと気づいたのは省吾さんが初めてで」

「ハハ。そうか。私にだけ拒否反応が出ていただけなのか」

 それなら、なおのこと。
 私以外の男なら、確実に彼女を幸せにできるじゃないか。

 胸が軋むように痛くなって、丸めた体の胸辺りをギュッと押さえた。

「省吾さん、こっちを向いて」

 彼女は私の頬にそっと手を添え、顔を持ち上げた。

「私が今まで好き、というか、お慕いしていたのは中村先生みたいな年上の方なので。それは、ファザコンの一種でしょう?と、省吾さんも言っていましたよね」

「ええ。そうだと思っていました」

「省吾さんと過ごすうちに、それは確信へと変わりました。父へ思い描いた感情を、恋心とすり替えていたと」

「だから今は私が好きだと言われても、やはり思い込んでいるだけとしか考えられない」

 彼女は寂し過ぎるだけなのだ。
 幼い頃に父親と離れ、今は母親をも離れようとしている。

 ただ側にいる私に、すがりたいだけ。
 それでは、彼女自身の幸せが逃げてしまう。

 彼女がなにを言おうと、自分の考えは揺るぎない自信があった。


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