新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~
なにを言えばいのか分からなくなり、黙っている私に、彼女は言葉を重ねる。
「あの頃も今も、私の気持ちを奪うだけ奪っておいて、いなくなろうとするのは、意地悪です」
私は再び、頭を弱々しく振る。
彼女はなおも続けた。
「中村先生が仰った『大切なもの』が、もしも私の自惚れではなく、私だとするのなら。お願い。この手を離さないで」
最後は掠れて消えかけた声は、私の心を掴んで揺さぶる。
彼女は自分の手を私の手の上に重ねた。