新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~
9.愛し合いましょう
愛し合いましょう 結愛side
省吾さんは消えそうな声で告げる。
「離せなくなる前に、離れてしまいたい。大切なものは、必ず無くなってしまうから」
彼の声も、彼の訴えも。
心が千切れそうなほど痛くなる。
けれど、なにも言えずに、ただ彼に肩を貸し、彼の背中に手を置くことしかできない。
「だから大切なものは持ちたくない」
彼の気持ちが痛いほど伝わる。
「失いたくない。結愛さん。私の前から、いなくならないで」
私は思いっきり息を吸い込んで、出来る限り明るく努めた。
「私、いなくなったりしません」
自分にも言い聞かせるように続ける。
「私、強いので」
「すぐに、熱を出すくせに?」
「それは、平気です。旦那様が内科医なので」
これには笑われてしまった。
「冗談も休み休み言ってほしいよ」
笑われたっていい。
省吾さんの悲しみが薄まるのならば。