新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~
シャワーを浴び終え、リビングルームに戻ってみても彼女の姿はない。
もう一度、ベッドルームの方へ様子を伺いに行くと未だにベッドから出られずにいる膨らみを見つけた。
静かに歩み寄り、丸くなっている彼女の横に腰掛ける。
「どうしますか? のんびり過ごすのも新婚旅行の醍醐味かもしれませんね」
声に反応し、こちらに向けた顔を見て絶句する。
そして深いため息を吐いた。
「どうして、あなたは……」
「ごめんなさい」
怒られた子どものように小さく謝る彼女に、再びため息を漏らす。
「謝らなくていい」
「だって、怒っています」
「いや、怒っているのは『自分に』です。内科医であるのに、あなたの変化に気付けなかった」
先ほどは顔を覗き込まなかったとはいえ、発熱を見逃すなど医師にあるまじき失態だ。
「母でも気付きません。それに私、自分でも平気だと思って……」
肩で息をする彼女は、辛そうに顔を歪ませて笑う。
その姿が痛々しい。
「母一人子一人でしたからね」
自分も片親だから分かる。
心配を掛けないようにわざと強がってみせたり、逆に心配を掛けるような行動を取ったりしていた。
彼女の場合は心配を掛けない、ただそれだけだっただろうけれど。