新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~
省吾さんは謙吾さんに「妻の紹介と中村医院の今後について話したい」と伝えてあるようで、さっそく本題が話された。
口火を切ったのは、謙吾さんだった。
「父さんに隠居を勧めたのは、俺なんだ」
「は」
初っ端から思いも寄らない内容だったようで、省吾さんは言葉を詰まらせた。
「父さんも十分働いたろ。放っておいたら病院と朽ちていっても本望だって言いそうだから。父さんもそろそろ自分の好きな人生歩めばって」
「そうか。謙吾が。気を利かせ過ぎだろ」
「気が利くだろ。俺」
「調子に乗るな」
軽く笑う省吾さんから、弟さんとの仲の良さが伺える。
気安い言葉遣いが新鮮だ。
「病院は俺が引き継いで、今の看護師さんと、雅さんもうちの病院に来てくれるっていうから」
「そうですか。弟を公私ともによろしくお願いしますね」
お兄ちゃんらしく頭を下げる省吾さんを、微笑ましく見つめる。
雅さんは「いえいえ。私なりに頑張るだけですから」と謙遜した。
看護師として、専門的に支えられる雅さんが羨ましくなる。
ううん。私も、私が出来る範囲で省吾さんを支えるつもりだ。