新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~

 宴もたけなわになり、省吾さんは「病院を手伝おうか」と切り出さないまま、解散になってしまいそうだ。

「結愛さんはどんな仕事を?」

 謙吾さんの今している仕事や、看護師の雅さんの仕事を伺って、私も仕事を聞かれた。
 畑違いの仕事は、どう説明していいのかわからなくて、ざっくりと説明する。

「アオシマコーポレーションの総務部で、社員の出張の手配や、備品の管理とか、社内の雑務全般が仕事です」

「そう。事務なんだ」

 謙吾さんは雅さんに目配せをしてから、私に切り出した。

「結愛さんは医療事務とか興味ないの?」

「医療、事務ですか」

「うん。結愛さんが良ければ中村医院で医療事務の仕事を」

「お前、話の順序があるだろ」

 省吾さんが低い声で咎めると、謙吾さんは肩を竦めた。

「だって、兄さんは自分の考えを曲げない人だからさ。結愛さんを先にこっちに取り込んだ方が早いと思って。結愛さんが働いてくれたら、兄さんだって気になって中村医院で働くって言いそうだろ」

 悪びれる様子もなく、謙吾さんが言うのを私は目を白黒させて聞く。
 省吾さんは腕組みをして、謙吾さんの言い分を聞いている。

「お前と雅さんで頑張ってやっていくんじゃないのか」

「それは、もちろんそのつもりだけど。兄さんも言っていたみたいに、医師の二人体制の片割れが兄さんなら、こんなに心強い話はないわけで」

「今日は、最初から結愛をたぶらかすつもりで?」

 結愛と呼び捨てにされ、私は密かに顔が熱くなる。
 対外的には呼び捨てが正しいのだろうけれど、ドキドキと鼓動が速くなる。


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