新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~
「しかし今はもう、その特技は必要ありません。私と夫婦になりました。頼ってください」
「……はい。ありがとうございます。でも、どうしてもバナナボートに乗ってみたかったんです」
布団で顔を隠すように肩を縮めながら、恥ずかしそうに言う彼女に笑みをこぼす。
「そんなにバナナボートに乗りたかったんですね」
「それは……」
私を見る潤んだ瞳が揺れ、思わず伸ばしかけた手で空を掴む。
「また来たらいい」
「そう、ですね」
「とにかく今はおやすみ」
「はい」
名ばかりの夫婦。
互いの利害の一致と様々な要因が重なり合い、一緒にいるだけだ。
一生を添い遂げるかどうかも、分からない。
私たちには意味をなさない形ばかりの未来への約束をして、彼女はまぶたを下ろした。